ロリータ (新潮文庫)【あらすじ】
亡命欧州人の中年男ハンバート・ハンバートは、米国で文学を教える大学教授。
あるとき、12歳のドローレス・ヘイズ(愛称ロリータ)と運命の出会いをする。若いときに死別した最愛の恋人アナベル・リーに瓜二つの少女に一目惚れしたハンバートは、ロリータに近づくため彼女の母親と結婚する。
母親が事故で死ぬと、ハンバートはロリータを騙して連れ出し、全米各地を転々としながら理想の女性に仕立て上げようと努力するが、ハンバートに嫌気のさしたロリータは隙を見て逃げ出してしまう。
ロリータが忘れられないハンバートは懸命に捜索し、3年後にようやく見つけることに成功するが、愛おしい少女はすでに結婚して妊娠までしていた。
ナボコフ(ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・ナボコフ)が英語で執筆した長編小説。原題は『Lolita』。
“ロリータ・コンプレックス”(ロリコン)のロリータは、本書のヒロインであるドローレスの愛称が由来である。
1953年には脱稿していたが、米国の版元に出版を断られたため、初版は1955年にパリで出版された(前年には同じパリで『Oの物語』が刊行されている)。
少女性愛を助長するような内容に賛否両論が渦巻いたが、1958年に米国で出版されると、たちまちベストセラーとなり、現在ではナブコフの代表作とみなされている。
本書のキーワードは“ニンフェット”(nymphet)。
著者の定義によると『9歳から14歳の魅惑的な少女』がニンフェットだが、ただ可愛いだけではダメで、そこに性的な魅力がなければならないとされる。
だから、主人公のハンバートはロリータにニンフェット特有の魅惑を感じ、実際に彼女と性的関係をもつ。
しかし、当たり前のことだが、少女は成長する。ハンバートもオトナへと変化するロリータに困惑し苦悩する。
本作では、このあたりの心情がさまざまな隠喩を用いて詳細に語られていて、文学作品としての価値を高めている。
本作は少女性愛の部分ばかり強調されるきらいがあるが、サスペンス小説としての魅力も満載だ。
ニンフェットから逸脱したロリータに対し、ハンバートはある方法で決着をつける。ストーリー的には完全なバッド・エンドだが、ニンフェット嗜好のハンバートにとっては最良の方法だったのだろう。
ロリータの産んだ娘にまた恋をするという展開もありえただろうが、ナブコフはそうしなかった。
ハンバートにはロリータが唯一無二の存在だったのだ。
本作に関しては映画も超オススメ。
最初の映像化作品は、スタンリー・キューブリックが監督した上映時間152分のモノクロ映画『Lolita』で、1962年に公開された。
ナブコフが脚本を執筆したが、長すぎるという理由で大部分が削除され、最終的にはキューブリック的な作品に仕上がっている。
時代的な制約(当時のハリウッドには『未婚の男女が一緒に横たわってはならない』といった規制が存在した)から、本作に性的描写はなく、ロリータの年齢も上がっている。そのため、小説を忠実に映像化した作品とは言えないが、キューブリックの魅力はじゅうぶんに伝わってくる。
2度目の映像化は1997年の『Lolita』。監督は『フラッシュダンス』『ナインハーフ』のエイドリアン・ライン。
原作の世界観をほぼ忠実に再現しているが、それゆえに各国で上映反対運動が起き、米国では一部の映画館で上映されるにとどまった。日本では1999年にPG-12で劇場公開された。
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