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『チャタレー夫人の恋人』D.H. ロレンス


チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)


【あらすじ】
 コニー(コンスタンス)は、炭坑の村を領地に持つ貴族のクリフォード・チャタレイ准男爵と結婚するが、クリフォードは第一次世界大戦に出征して負傷し下半身不随となり、結婚後半年でセックスレスとなる。
 チャタレイ家の跡継ぎをつくるため、クリフォードはコニーに恋人を持つよう促す。ただし、同じ階級であることと、妊娠したらすぐに身を引くことを条件とした。
 23歳のコニーは希薄な夫婦関係に苦悩し鬱々とした日々を過ごすが、ある日、森番のオリバー・メラーズと肉体関係を結ぶ。
 女としての歓びを知ったコニーは、森の中で逢瀬を重ね、オリバーを深く愛するようになる。


 D・H・ロレンス(David Herbert Richards Lawrence)の長編小説。原題は『Lady Chatterley's Lover』。
 1928年に限定版として刊行されるが、すぐに発禁処分となる(英国で完全版が刊行されたのは1960年)。1915年にも、母娘三代にわたる愛憎を描いた長編小説『虹』が同様の処分を受けている。
 その後、ロレンスは第二稿と第三稿(最終稿)を執筆した。現在もっともポピュラーな版は第三稿である。

 日本では伊藤整が訳した第三稿が、1950年(昭和25年)4月にロレンス選集の初回配本として小山書店から出版された。
 『チャタレイ夫人の恋人』はたちまちベストセラーとなるが、あからさまな性描写が問題となり、6月に警察によって押収され、9月には版元の小山久二郎と訳者の伊藤整が刑法第175条の猥褻物頒布罪で起訴される。世に言う『チャタレー事件』である。

 裁判では“表現の自由”と“公共の福祉”の関係が議論され、最高裁判所は「性的秩序を守り、最少限度の性道徳を維持することが公共の福祉の内容をなすことについて疑問の余地がないのであるから、本件訳書を猥褻文書と認めその出版を公共の福祉に違反するものとなした原判決は正当である」として、二人の罰金刑が確定した。
 この判決は現代の裁判にも大きな影響を及ぼしている。いわゆる“わいせつの三要素”で、①徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ、②且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し、③善良な性的道義観念に反すると、猥褻物と見なされ規制の対象になる。

 裁判の結果、1964年(昭和39年)、問題箇所をアスタリスクで表した削除版が新潮文庫として刊行された。
 新潮文庫の新旧版を見比べて、旧版最後のアスタリスクの部分(約3ページ)を抜き出してみる。

 官能的な情熱の夜となった…もっとも深く、もっとも古い恥が、もっとも秘密な場所で焼き去られてしまった…彼女は奴隷のように、肉体的な奴隷のように、受動的盲従的な物体にならなければならなかった…この夜も恥が猟り立てられ、男のペニスという猟師に追いたてられた…彼女の自我はいま肉欲的な自我であり、裸となり、恥も感じなかった…そして、男根は無理やり彼女の中に入りこんできたのだ!…彼女は少しでも彼から離れないように、彼の傍へもぐりこんだ。


 その後、1973年(昭和48年)には、裁判で猥褻表現とされた部分を復活させた完全版が、羽谷謙一の訳で講談社から出版された。

 現在もっとも普及している訳本は、1996年(平成8年)に完訳として改訂された新潮文庫版だが、ここ10年あまりの間に数種類の新訳が出版されている。
 容易に入手できるのは、武藤浩史訳のちくま文庫版と、木村政則訳の光文社古典新訳文庫版。個人的にオススメなのは木村政則訳。単語や方言に工夫が凝らされていて、読みやすく理解もしやすい。
 また、発禁処分となった第一稿を訳出したものに、増口充訳の『初稿 チャタレー卿夫人の恋人』がある。

 有名な小説だけあって、映像作品も少なくない。
 いちばんのオススメは、第二稿を原作とした『レディ・チャタレー』。フランスでセザール賞を獲ったパスカル・フェラン監督の作品で、フランス映画らしい官能美が見事に表現されている。
 ケン・ラッセル監督の『チャタレイ夫人の恋人』は、第三稿を映像化してBBCで放映された連続ドラマ。日本で劇場公開されたのは短縮版なので、ヘア解禁のノーカット版で鑑賞したい。
 『エマニュエル夫人』シリーズで有名なシルビア・クリステル主演の『チャタレイ夫人の恋人』は、エロ全開のB級作品。ポルノ映画として観るならオススメの作品だ。



   

  

  


 
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