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『金瓶梅』蘭陵笑笑生


金瓶梅〈上〉 (徳間文庫)


【あらすじ】
 政和3年(1113年)、山東省清河県の城内で薬屋を営む27歳の西門慶は、正妻(呉月娘)と3人の側室(李嬌児、孟玉楼、孫雪娥)をもつが、武大の妻である25歳の潘金蓮(金瓶梅の“金”)と不倫した挙げ句、金蓮に夫を毒殺させて第5夫人にする。
 その後、隣家の人妻である李瓶児(金瓶梅の“瓶”)を寝取り、夫が死んだところで財産ごと奪い取って第6夫人にするが、好事家の西門慶は自分の夫人だけではモノ足らず、召使いの龐春梅(金瓶梅の“梅”)や奉公人の妻たちにまで手を出し、罪深き淫蕩生活を大いに楽しむ。
 商才にたけた西門慶は、要所要所に賄賂を贈ることで商売を広げ、質屋(高利貸し)、呉服屋、綿屋、絹屋などを経営して巨万の富を得る。また、官吏を買収することで提刑所理刑(警察と裁判所の副長官)となり、賄賂を受け取る立場になる。
 李瓶児は、西門慶の跡継ぎを産むが、金蓮に執拗な嫌がらせを受けたことが原因で愛息が亡くなり、政和7年(1117年)9月17日、失意のうちに病死する。享年27歳。
 同年11月、提刑(警察と裁判所の長官)に推挙された西門慶は首都開封へ赴くが、慶の栄華は5年足らずだった。
 重和元年(1118年)1月21日、金蓮が飲ませた媚薬が原因であっけなく死んでしまう。享年33歳。皮肉にも同日に、呉月娘が待望の長男を産む。 
 西門慶が急死すると、西門家はあっという間に傾き、女たちの運命にも変化があらわれる。
 潘金蓮は、娘婿と不倫をして堕胎したことが発覚して売られてしまい、最後は元夫の弟である武松に首をはねられ内蔵を引きずり出される。享年32歳。
 龐春梅は、上級軍官の第二夫人に収まるが、尻軽な行動が災いし、夫や愛人が死んだ上、自分も性交中に腹上死してしまう。享年29歳。
 一方、正妻の呉月娘だけは、大切な一粒種を出家させることで悪運から免れることに成功する。店の経営を縮小して優秀な番頭に任せ、その番頭を古株の女中と結婚させて養子とすることで家門を復興させ、安楽な晩年を過ごすことができた。享年70歳。


 明の万暦年間(1573~1620年)に完成したとおもわれる白話小説(口語体で書かれた小説)。正式名称は『金瓶梅詞話』。書名は3人のメインキャスト(潘金蓮、李瓶児、龐春梅)の名前から採られている。中国四大奇書のひとつ(ほかは『三国志演義』、『水滸伝』、『西遊記』)。
 性愛シーンが多く艶本として読まれることも少なくないが、綿密な構成や精緻な描写は後生の小説に大きな影響を与えた。
 著者は蘭陵笑笑生だが、本名は諸説あって不明。複数人説もあるが、現在では個人説が有力。
 本書は『水滸伝』のアナザーストーリーで、第23話から始まる武松のエピソード『武十回』を起点に物語が展開してゆく。『水滸伝』との違いは、武松による敵討ちがすぐに実行されず、西門慶の死後になるところ。

 この作品は日本でも江戸時代から読まれている(現存する完本3セットのうち2セットが日本にある)が、原典をすべて訳出した現代文の完訳版はまだ出版されていない。
 中国文学者の小野忍と漢文学者の千田九一 が翻訳した岩波文庫版(全10巻)がもっとも完訳に近いが、肝心要の性愛シーンが割愛されていたり原文のままだったりする。
 中国評論家の村上知行が訳したちくま文庫版(愛蔵版 ザ・金瓶梅)は、換骨奪胎された抄訳で、本書の面白味が消されている。性交シーンの多くもカットされている。
 逆に、性描写にこだわって訳出されたのが、中国研究家の土屋英明が翻訳した徳間文庫版だ。性交シーン以外はあらすじしか書かない徹底ぶりで、金瓶梅のエロい部分に興味のある読者にとっては最良の翻訳書といえる。



  

   


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