飼育 (フランス書院文庫) 蘭光生{らんこうせい}は、SM御三家のひとり(ほかは団鬼六と千草忠夫)で、“レイプの帝王”と呼ばれ、1980年代に多数の官能小説がマドンナメイト文庫やフランス書院文庫から出版された。
団鬼六や千草忠夫と異なる点は、蘭光生のレイプ小説が作品群の一分野でしかないこと。彼は式貴士、間羊太郎、小早川博などのペンネームを使い分けて、SF小説、推理小説、うんちくエッセイなどを書いた。
そのため、蘭光生の文章は淡泊で粘着質なところがなく、レイプ物でもすんなり読み進めることができるが、加虐性、被虐性という部分では説明的、解説的な描写に物足りなさも残る。
本作のストーリーはとてもシンプルで、英文学研究者のデカ女と結婚した中年のチビ男が、美しい処女の女教師を自宅に連れ込み、さまざまな性技を仕込んで調教するというもの。
早稲田大学の大学院で英文学を専攻した著者ならではのスパイスが米国の女流詩人“エミリー・ディキンソン”。主人公の妻は彼女の研究者で、生け贄の女教師も卒業論文のテーマに彼女を選んでいる。主人公は女教師を誘い込むために彼女を利用している。作品内でも彼女の詩が効果的に使用されている。
本書は1986年に刊行された作品の復刻版。再版の希望が多かったため、2015年の5月に出版された。
僕も20年くらい前に読んだ記憶がある。今回、ネットでの評判がわりとよかったので買って読んでみた。
あらすじをすっかり忘れていたため新刊のように接することができたが、ティピカルな大甘ストーリーにちょっとガッカリした。女教師がとった態度は男の理想型だとは思うが、長編小説としては陳腐な気がする。
フランス書院の売り文句にのせられてしまった?
文句ばかり書いてしまったが、蘭光生は僕が好きな官能小説家のひとりである。
オススメなのは『淫獣』(1982)と『俘囚』(1983)。どちらもミリオン出版で刊行されたSM作品で、フランス書院文庫で復刊されたが、現在は絶版状態。読むには中古本を探すしかない。
この頃が蘭光生というSM作家のピークだったと個人的には考えている。
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