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愛妻の特殊按摩体験(3)


 10時ちょうど。部屋の呼び鈴が鳴りました。
 重いドアを開けると、マッサージ師の男性が立っていました。
「はじめまして。島田ひろみと申します。本日はご指名いただきありがとうございます」
 初対面の振りをしましたが、実は私と島田さんは一度会っています。愛妻を預けるわけですから、マッサージ師選びは慎重に行いました。
 ネットに掲載されている専門店はどこも怪しそうだったので、インターネットのエロ友網を駆使して、信頼のおけるマッサージ師を探し出しました。実際に利用したという友人の知り合いが推薦してくれたのが、島田さんでした。
 それでも不安を払拭できない私は、島田さんに直接電話し、打ち合わせという名目で会い、愛妻を預けるに足る男かどうか確認しました。

 入室した島田さんは、ソファーに座ってうつむいている妻の前へ行ってていねいな挨拶をします。
「奥様、今日は宜しくお願いします。精一杯頑張らせていただきますが、ご要望等ございましたら、その都度、遠慮なくおっしゃってください」
 無表情の妻が慌てて立ち上がってお辞儀をします。
「こ、こちらこそ宜しくお願いします」
 島田さんが妻を見つめて微笑みます。
「それではシャワーを浴びてユニフォームに着替えさせていただきます」

 緊張している妻に話しかけます。
「優しそうな人でよかったね。それに細マッチョのイケメンだし」
 ベッドへ移動しながら妻が答えます。
「そ、そうね。清潔そうな人でよかったわ。あの人なら触られても大丈夫そう…」
「そうだね。僕も安心したよ。引っ張りだこだっていうのも納得できるね」
「そうなの?」
「そうだよ。最愛の人を任せるんだから、今までの人生でいちばん真剣に調査したよ」
「会社のお仕事より?」
「もちろん!」
 ベッドに腰掛けた妻が尋ねます。
「どういう姿勢でいればいいの?」
「ふつうにうつぶせでいいんじゃないの」
「これは?」
 頬を赤く染めた妻がガウンの襟を軽くゆすります。
「着たままでいいと思うよ。いきなり裸っていうのはないでしょう」

 しばらくして、島田さんが戻ってきました。
 Tシャツにスラックス。色は上下とも白です。小麦色に焼けた肌には体毛がまったくありません。こういう商売ですから、きっと全身脱毛しているのでしょう。
「いますぐ準備しますので」
 サイドテーブルに大小さまざまなボトルが並べられていきます。
(これが妻の肌に塗り込められるんだ)
 瓶の中身が愛妻の性感を高める液体だと思っただけで、心臓がドキドキしてきました。

 私も自分の準備を始めました。
 スーツケースからビデオカメラと三脚を取り出して部屋の隅にセッティングし、ベッド全体が写るように調整しました。
 本当はベッドの脇に置きたかったのですが、撮影の許可をとっていなかったので、妻からは死角になる場所に据えました。手元には小型のデジカメを用意しました。
 事前に許可をとらなかったのには理由があります。
 妻はビデオ撮影が大嫌いなんです。ビデオを向けるとレンズに手を当てて拒否します。ですから、我が家には妻が単独で写っている映像は数えるほどしかありません。
 しかし、なぜか写真には抵抗がありません。下着写真でも全裸写真でも平気で撮らせます。局部の写真はさすがに拒みますが、性交中のいわゆるハメ撮り写真は、嫌がりながらも拒絶はしないのです。

「それでは始めさせていただきます」
 そう言って、島田さんがベッドに上がり、うつぶせになっている妻の脇で正座します。
「まずは指圧で体をほぐしていきます」
 島田さんが大きなバスタオルを背中に掛け、両手を妻の肩に当てます。
(いよいよ始まる)
 愚息はすでに半立ち状態です。デジカメを持つ手が微かに震えています。
(最後まで我慢できるだろうか?)
 そんな不安が脳裏をよぎりました。


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豪円寺 琢磨
(Gouenji Takuma)

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