膝立ちの島田さんが施術を始めます。
オイルで照り輝く大きな手の平が華奢な鎖骨を優しくさすります。
(あっ! 直に触った!)
初めて会った男に素肌を撫でられている妻を見て、興奮が一段階高まったような気がしました。
妻は無反応です。上を向いたままずっと目を閉じています。その表情からは心の内を知ることはできません。
島田さんが指を自由自在に動かしながら話しかけます。巧みな話術により、心のほうもほぐれてゆきます。
「奥様、リンパマッサージは初めてですか?」
「ええ、聞いたことはありますけど、今日が初めてです。普通のアロママッサージはエステで何度もやってるんですけど」
「そうですか。リンパ液の流れをよくすることで体内に溜まった老廃物が取り除かれて新陳代謝がよくなるんです」
「そうなんですか?」
「リンパ液の出口はいま押している鎖骨の上あたりにあるんです。まずここを刺激してやって排出を促してやるんです」
「なんだか若返りそうね。楽しみだわ」
「時間の関係で今日はしませんが、顔のリンパマッサージもオススメです。奥様のような美顔がさらにキレイになるんです」
目をつむった妻の顔に笑みがこぼれます。
「まぁお上手ねえ。こんなオバさんでも効果あるかしら?」
「ご自分でもできますから、ぜひお試しください。あとでやり方をお教えしますね」
「ぜひぜひ。お願いします」
島田さんの10本の指は、首筋、脇下、上腕、肘、手と進みます。タオルケットは掛けられたままで、手をタオルケットにもぐり込ませながらの施術です。
両指のマッサージが終わったところで、島田さんが振り返って私を見つめます。
いよいよ性感マッサージが始まるのです。
私はまた黙ってうなずきます。
この時点で、自分的には気持ちの整理がかなりついていました。初めは不安や戸惑いが頭を混乱させましたが、マッサージを受けている妻を眺めているうちに、“他人に抱かれる妻を見てみたい”という当初の願望が心を占めてゆきました。
とはいえ、妻の気持ちがなにより大切です。
初めて会った男を受け入れる妻を見たいのはやまやまですが、愛する人の心を傷つけてまで欲望を満たしたいとは思いません。あくまで本人の意志で行動してほしいのです。
妻の枕元で正座した島田さんが、事務的な口調で妻の意志を確認します。
「奥様、バストのマッサージをさせていただいてもよろしいでしょうか?」
言葉の真意がわかったのでしょう。今までずっと閉じられていた目がゆっくりと開き、焦点のぼやけた視線が私を捜します。
「貴子、どうする?」
私は急いで言葉を発しました。平静を装ったつもりでしたが、妻の後日談によると声がうわずって不安な様子がひしひしと伝わってきたそうです。
軽く頭をもたげた妻が傍らで立ちすくんでいる私を見つけました。
艶めかしく潤んだ瞳を見つめながら、私は言葉を継ぎました。
「無理しなくてもいいんだよ。君の好きなようにしなさい」
湿り気を帯びた薄い唇がかすかに動きました。
「あ・な・た…」
このとき突然、妻が美味しそうに他人棒をしゃぶっているシーンが、脳裏をよぎりました。
白い歯をこぼした妻が視線を天井に移し、ゆっくりと瞼を閉じました。ほんのりと赤らんだ両肩がかすかに震えています。
言いあぐねている様子の妻に、満面の笑みをたたえた島田さんが、お母さんが赤ちゃんに話しかけるような温かな声で話しかけました。
この瞬間しかないという実に絶妙なタイミングです。きっと、このような場面を幾度となく体験しているのでしょう。
「奥様、続けさせていただいてもよろしいですか? イエスならうなずいてください。ノーなら肩をすくめてください」
妻のアクションは、意外なものでした。
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