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『花と蛇』団鬼六


花と蛇〈1〉誘拐の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)


 日本の戦後SM文学を代表する長編作品。通俗SM小説の古典とも呼ばれている。
 1962年(昭和37年)の『奇譚クラブ』8月9月合併号に、『創作 花と蛇』が花巻京太郎名義で掲載された。翌年、団鬼六のペンネームで再開され、1971年(昭和46年)11月号の第79回話(実際には77回)で完結した。
 その後、SM雑誌の『SMキング』や『アブハンター』等で、断続的に続編が発表され、1971年(昭和45年)に耽美館から『花と蛇 完結編』が刊行された。


 現在、新刊で入手が可能なのは、幻冬舎アウトロー文庫版。全10巻で、章立てとあらすじは以下のとおり(アウトロー文庫の紹介文を引用)。

1 誘拐の巻
 端整な面立ち、二重瞼の大きな目、滴るばかりの艶かしさ……。財界の大立者、遠山隆義の後妻で、二十六歳になる美貌の静子が、義理の娘とともにズベ公グループに誘拐された。彼女を待っていたのは、鬼畜たちによる想像を絶した調教の数々だった。裏切り、絶望、凄惨な責め苦……。

2 涕泣の巻
 緊縛、浣腸、剃毛……。義理の娘とともに、ズベ公たちによって性の奴隷として屈辱的な調教を受ける静子夫人。救出に来た探偵の京子も嬲られたうえ、妹の女高生・美津子までが捕らえられた。奈落の底に落ちた女たちに、容赦なく襲いかかる餓狼たち。やがて、美津子の恋人とその姉が新たな餌食に……。

3 飼育の巻
 気高い深窓の令夫人・静子は悪魔たちに新たな羞恥責めを強いられる。それは義理の娘との母娘緊縛ショーだった。絶望のどん底に響く、美女二人の慟哭。一方、探偵・京子の妹・美津子と、恋人の文夫は、ズベ公たちの面前で、初めての肉体関係を結ばされて……。もはや、鬼畜たちからは逃れられない!

4 調教の巻
 「いけないわ、どんどん気持ちが良くなってしまう……」 “秘密ショー”のスターになるための残忍無比な調教を受ける美貌の女探偵・京子と静子夫人。執拗な秘所責めに、ついに肉体が屈伏、二人は被虐の快楽に目覚めていく。一方、京子の妹は、ズベ公たちに、恋人への口唇奉仕を命じられ……。

5 憂愁の巻
 深窓の令嬢らしく艶めかしく光る黒髪、象牙のような首筋……。ズべ公たちの手に堕ちた可憐な小夜子は、静子夫人の日本舞踊の弟子だった。処女の肉体を無慈悲な責め苦によって奪われた挙げ句、あらぬ姿を撮られた写真を同級生全員に送りつけられた。生き地獄の苦しみを味わう小夜子だが、それはまだ序章だった。

6 羞恥の巻
 「小夜子さん、堪忍して。私は鬼になってしまったの……」舞踊界では美貌の師弟と絶賛された静子夫人と弟子の小夜子。だが今では、調教師・鬼源に仕込まれた静子が、小夜子を叱咤しながら調教している。女の体を駆使しての書の稽古、バナナ切り、卵割り……と師弟による羞恥地獄は、永遠に続く!

7 屈辱の巻
 凄惨ないたぶりで、処女の身を凌辱された小夜子への責め苦はまだ終わらない。諦観の果てに、ズベ公たちの面前で実弟との「姉弟ショー」を強いられて……。

8 号泣の巻
 新たな獲物が毒牙にかかった。生花家元の娘で十九歳になる京美人の美沙江。男たちに“人間花瓶”と称する凄惨な調教を受ける美沙江は、次第に女の悦びを教えられ……。

9 被虐の巻
 色地獄で嬲りものにされている静子夫人と、若妻・珠江。二人は調教で変わり果てた我が身に涙を流す。一方、美人探偵の京子は妹とともに姉妹ショーに……。

10 完結編
 絶望の淵で責められる静子夫人の肉体は、気持ちとは裏腹に妖艶さがますばかり。やがて、医師によって人工授精を施されるが、それは悪魔の計画の序章だった。


 団鬼六は『新版・花と蛇について』で、以下のような告白をしている。

 私が初めてこれを掻き出したのは、二十六、七歳の頃で世に発表する意思など毛頭なかった。青春期の性的飢餓感から来る性的妄想をつづったもので、自分を楽しませるために自分で書いたワイ本だったのである。つまり、これを書く事が自分の自慰行為につながったのだ。

 要するに、自分の性的欲望を本能の赴くままに文章化したのが本書ということだ。

 私が初めて本書を読んだのは、1984年から85年にかけて刊行された角川文庫版(全8巻)だったが、そのインパクトたるや、大変なものであった。それまでに谷ナオミ主演の映画を観ていたが、文章の方がずっとずっと強烈で、「こんな猥本を角川文庫から出しても問題ないの?」と思ったものだ。
 その後、完全改訂版全3巻(表紙絵は天野喜孝)が1992年に太田出版から刊行され、それも読んだが、性的表現に制約が多かった時代の“味”が薄れていてガッカリした(出版当時の雰囲気を楽しみたい人は、中古の角川文庫版がオススメ)。
 また最近、この感想文を書くためにアウトロー文庫版を買って読んでみたのだが、さらなる改訂(これが最終的な改訂)が施されていて、ずいぶん読みやすくなっていた。

 それにしても、長い。
 以前読んだときはあっという間だったが、今回は読み進めるのに努力が必要だった。
 シチュエーションが異なるだけで同じような話が延々と続くため、SMに相当な興味がないと途中で飽きてしまう。個人的には3巻まで読めばじゅうぶんだと思う。

 とはいえ、もしまだ手に取っていないなら、試しに読んでみることをオススメします。
 半世紀以上前の日本で本書のような変態的官能小説が発表されていた、という事実を確認するだけでも、読む価値があると思います。



   

  


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豪円寺 琢磨
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