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歪形の家族性活(10)


 祥子はいま、豪奢な邸宅の一室にいる。
 その和室は離れにあり、本宅とは細長い廊下で結ばれている。建物は生け垣で囲まれているため、外から中を覗き見ることはできない。
 障子越しに外を眺めると、散りかけの梅と開きかけの桜が、端正な庭をにぎやかに飾り立てているのが見える。
 しかし、花を愛でる余裕など、祥子にあるはずもない。

 八畳間の真ん中に大きな敷き布団が置かれ、その中央に男が胡座をかいて座っている。
「さぁ、早く服を脱がんか!」
 西側の襖を背にして、祥子がぽつんと佇んでいる。
「気持ちの整理がついたんじゃないのか? 嫌なら嫌でいい。それなら、さっさと出て行け!」
 男の剣幕に押され、祥子がやっと口を開く。
「こ、こんな明るいところでは…せ、せめて背中を向かせてください」
「ダメだ。ワシの顔を見ながら脱ぐんじゃ」
 色とりどりの牡丹が咲き乱れる真っ赤な大振袖を、いたいけな生け贄が身に纏っている。
「どうしてこんな派手な衣装を着せるんですか?」
 男がニヤつく。
「今日はオマエの成人式だからさ」
「そんな…私はもう24ですし、子持ちの人妻です。振り袖なんか恥ずかしくて…」
「だから、いいんじゃないか。きっと良い思い出になるはずじゃ」

 深紅の帯締めに手を掛け、黄金色の帯を外す。前板、後板、枕、伊達締め、腰紐をとって振り袖を落とすと、薄桃色の長襦袢が姿を現すが、祥子の手がここで停まる。
「おい、さっさとせんか。もう少しじゃないか」
 顔を真っ赤にした若妻が、うつむいたまま懇願する。
「脱ぎますから、少しの間、横を向いていただけませんか?」
 男が即答する。
「いやじゃ! 恥ずかしがりながら脱ぐところを見るのが楽しいんじゃないか。それとも、襦袢を着たままで犯されたいのか? ワシはそれでもかまわんぞ」
「いいえ、けっしてそんなつもりじゃ…」
 生け贄がまた動く。手が震えている。
 長襦袢と肌襦袢がなくなり、覆うものが純白の湯文字と足袋だけになった。

 祥子は両腕で小ぶりな乳房を隠してうつむく。
「ほらっ、腰巻きもとらんか!」
 湯文字の腰紐が解かれると、下半身が露わになる。
「ほー、毛はけっこう濃いんじゃなぁ。意外じゃ」
「そんなこと、おっしゃらないでください」
 祥子が『ヴィーナスの誕生』そっくりのポーズをとる。
 裸体に欲情を覚えた男が、生け贄を急かす。
「なに、突っ立っとるんじゃ。はやく始めるんじゃ。オボコじゃあるまいし、することぐらいわかっとるじゃろ!」

 祥子は男の目の前まで歩を進め、その場で正座をする。一息ついてから、意を決したかのように男の股間に顔を近づけ、思い切って着流しの裾を広げる。
 醜悪な姿をした一物はダラリと垂れ下がり、先端が畳についている。
 左手で下から支え、根元を右手で握り、しぼんだ亀頭を口に含む。右手でしごきながら頭を前後に動かして、口内の肉塊を刺激する。
「おお、なかなか気持ちええのう」
 若妻の口淫で男の肉棒が長大化する。
「よし、もうええ」
 そう言って男が立ち上がる。
「脱がせてくれ」
 背が男の肩までしかない小柄な祥子が、万歳をするようにしてコットンの長着とウールの襦袢を脱がし、膝立ちになって半立ちの肉棒を再び口に含む。
 あまりの大きさに祥子がむせると、それを待っていたかのように男が大の字に寝転ぶ。

 男がぶっきらぼうに命令する。
「ワシに乗っかれ!」
 男の股間で正座している祥子が、驚きの声を上げる。
「えっ! そ、それは…」
 男が頭をもたげて怒鳴る。
「なにを驚いとるんじゃ! 騎乗位くらい知っとるじゃろ。さっさと跨がらんか!」
 祥子はまだためらっている。いきなり自分から跨がってするなんて、予想だにしていなかった。
「で、でも、自分から乗るなんて…」
 苛立った男が責め立てる。
「早くせんか! 裸のまま庭に立たせるぞ!」

 白足袋を履いた裸体の婦人が、大男の太い腰を跨いで厚い胸に小さな手をつく。そして、右手で剛直を握り、自ら秘所へ導く。
 ためらいがちに細い腰を沈めると、潤いはじめたばかりの小さな花芯と、照り光る醜悪な亀頭が、微かに触れ合う。
 女体が驚いたようにピクンと小さく跳ねる。
 すると、男が腰を突き上げ、先端を無理やり埋没させる。
 男の意外な動きに、思わず嗚咽が漏れてしまう。
「うっ」
 男が下から急かす。
「はやくせんか!」
 女が再び動き出すと、巨大な肉棒が徐々に姿を消してゆく。
「ああー」
 嗚咽が歓声に変わる。
「全部、収まったようじゃのう。ほら、動いて、気をやってみんか!」
 祥子は男の広い胸に両手をつき、両膝で体を支えながら、細い腰をゆっくりと前後させる。

 祥子がぼんやりと考える。
 これで3人の男と交わったことになる。
 3人目の男とは初めから騎乗位で繋がってしまったが、義弟の磯谷孝次{いそがいこうじ}と騎乗位で重なったのは、いったい何回目だっただろう? 5回目? 10回目? もう思い出せない。
 この男は正常位で抱きしめてくれるのだろうか? ふつうに愛してくれるのだろうか? たぶん、それは叶わぬ夢だろう。
 しかし、孝次のときよりずっと気持ちいい。以前にもまして淫らになっている自分がいる。これ以上エスカレートしたら、どうなってしまうのだろう?

 祥子の頭を漠然とした不安がよぎる。
 絶頂は近い。


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豪円寺 琢磨
(Gouenji Takuma)

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